海洋生物試料の固定・保存におけるルゴール液の汎用性を確認 ~遺伝子解析・安定同位体比分析・形態観察に有効~

生物学では、採取した試料を持ち帰って分析するために、多くの場合、採取後すぐに凍結保存や試薬による固定・保存の処理を行います。固定・保存に用いられる様々な試薬(例えばホルマリンやエタノール)は分析目的によってそれぞれ一長一短があるため、複数の分析に適用可能な手法の開発が望まれていました。国立極地研究所(所長:中村なかむら卓司たくじ)の佐野さの雅美まさよし特任研究員らの研究グループは、形態の維持が良好で、プランクトンなどの脆弱な海洋生物の固定・保存にしばしば用いられている「ルゴール液」(ヨウ素ヨウ化カリウム液、図1、注1)が、現在の海洋生態系研究で主要な研究手法である遺伝子解析や窒素・炭素安定同位...

Full description

Bibliographic Details
Published in:Limnology and Oceanography: Methods
Main Authors: 極地研究所, 創価大学, 東京海洋大学
Format: Other/Unknown Material
Language:Japanese
Published: 東京海洋大学総務課広報室 2020
Subjects:
Online Access:https://oacis.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=2693
http://id.nii.ac.jp/1342/00002618/
https://oacis.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=2693&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1
Description
Summary:生物学では、採取した試料を持ち帰って分析するために、多くの場合、採取後すぐに凍結保存や試薬による固定・保存の処理を行います。固定・保存に用いられる様々な試薬(例えばホルマリンやエタノール)は分析目的によってそれぞれ一長一短があるため、複数の分析に適用可能な手法の開発が望まれていました。国立極地研究所(所長:中村なかむら卓司たくじ)の佐野さの雅美まさよし特任研究員らの研究グループは、形態の維持が良好で、プランクトンなどの脆弱な海洋生物の固定・保存にしばしば用いられている「ルゴール液」(ヨウ素ヨウ化カリウム液、図1、注1)が、現在の海洋生態系研究で主要な研究手法である遺伝子解析や窒素・炭素安定同位体比分析(注2)目的での試料保存においても、長期にわたって有効であることを実験により示しました。本手法は特に、極域での海洋生態系研究において重要な観測であるセジメントトラップ(注3)への活用が期待されます。セジメントトラップはその仕組み上、試料に対して一つの試薬で固定するしかありませんが、そこに本手法を用いることで、一つの試料から複数の分析ができるようになります。また、凍結保存のような解凍時・解凍後の劣化や、エタノールのような組織の激しい収縮も発生しないため、極域のみならず広く海洋生態学、分類学に貢献するものと考えられます。 プレスリリース掲載論文はこちら: https://doi.org/10.1002/lom3.10390 プレスリリースの問合せ先は、発信当時のものです