In SARを用いた南極域における接地線と氷床表面形態の決定に関する基礎研究

極域氷床変動を知る上で、grounding line(接地線)、氷床表面地形(高さ)、氷床流動速 度を知ることが重要である。これらのパラメータについて、人工衛星搭載の合成開口レー ダ(Synthetic Aperture Radar : SAR と略す)から得られるデータを用いた干渉SAR解析 (Interferometric SAR : InSARと略す)が有効であることが知られつつある。InSARでは、 棚氷の海洋潮汐による上下動を利用したgrounding line の抽出や、氷床DEMの作成、氷床 流動の解析などが可能である。本研究では、これまで試行的には行われてきたInSARによ る...

Full description

Bibliographic Details
Main Authors: 山之口 勤, ヤマノクチ ツトム, Tsutomu YAMANOKUCHI
Format: Thesis
Language:Japanese
Published: 2007
Subjects:
Online Access:https://ir.soken.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=832
http://id.nii.ac.jp/1013/00000832/
Description
Summary:極域氷床変動を知る上で、grounding line(接地線)、氷床表面地形(高さ)、氷床流動速 度を知ることが重要である。これらのパラメータについて、人工衛星搭載の合成開口レー ダ(Synthetic Aperture Radar : SAR と略す)から得られるデータを用いた干渉SAR解析 (Interferometric SAR : InSARと略す)が有効であることが知られつつある。InSARでは、 棚氷の海洋潮汐による上下動を利用したgrounding line の抽出や、氷床DEMの作成、氷床 流動の解析などが可能である。本研究では、これまで試行的には行われてきたInSARによ るgrounding lineの同定を南極大陸の広い範囲について行い、 広域にわたり不確定であったgrounding lineの抽出を実施した。またあわせてInSARによる 高精度高分解能氷床表面地形の把握とその評価を実施した。 Groundinglineの抽出は、東南極域25°W-40°Eの範囲及び西南極域85°W-165°W の範囲で実施した。これらの地域はいずれも大陸縁辺部に沿って2000km以上にわたり棚氷 が分布している領域である。同一地域において観測時間が24時間異なる2つのSARデータ (タンデムデータ)を用いた干渉処理によりInSAR画像を作成した。InSAR画像には、 RAMP(Radarsat Antarctic Mapping Project)画像と呼ばれる地理情報を持っ画像データセット を介して地理情報を与えた。その結果、InSAR画像から抽出されたgrounding lineにも地理 情報が付加されている。使用している座標系はWGS-84系で、WGS-84基準楕円体上の緯度・ 経度をPolar Stereographic投影(Standard Parallel 71°S)で地理情報を与えた。 既存のgrounding lineデータとして存在するものにはADD(Antarctic Digital Database) がある。しかし、ADDに描かれているgrounding lineの情報には多くの誤りや不足があるこ とが知られている。東南極域 / 西南極域の両方でみられたInSARとADDのgrounding line の違いには、地理的な空間位置のずれ及び形状の不一致がある。位置ずれの空間分布には 系統性がなく、ランダムであった。その理由としては、ADDに反映されている地図情報が 部分的に30年以上昔の観測結果を利用しておりその位置の精度に問題があるものと、新し い(精度の高い)観測結果を用いているものが混在してしまい、その結果地理的な網が歪 んでしまったことが一因として考えられる。InSARによる結果には、1997年観測のRAMP 画像を基準として地理情報を与えており、RAMP画像のノミナルな幾何的誤差は±200mと されていることから、こうした誤差は起こりえない。ADD-lnSAR間のgrounding lineの具体 的なずれの量は、東南極・昭和基地周辺域ではRiiser-Larsen半島付近で約5000m、Padda島、Sallen付近で1200mを示した。その一方で、Neumayer基地周辺(10°W)では200m未満の良い一致を示していた。西南極域においてもこうしたランダムな位置ずれは起きており、ず れ量はSiple島(125°W)近辺では約6000m西向きへ、Pine island coast沿いのKing半島 (102°W30')付近で東向きへ7100mと非常に大きなずれ値を示した。 また、InSARによるgrounding lineはADDによるそれと比べて、各地域の微細な海 陸境界の形状を反映していることがわかった。これは、InSARによるgrounding lineの抽出 が棚氷と氷床の境目を棚氷の潮汐変動に伴う衛星方向視線ベクトルの変化で検出するとい うgrounding lineの定義に対して本質的な観測原理であるのに対して、ADDによるgrounding lineの抽出方法が主にLandsat衛星画像の判読により行われていることに起因する。例示す ると,ADDでは東南極のLazarevisen地域(70°00'S,14°30'E)の中央部において、grounding line が半島状に描かれており、またこの地域のLandsat画像やSAR強度画像をみても、半島が存在しているようにみえる。しかしInSAR解析により、実際にはこの形状は南極大陸から分離した3つの小さな島の集合であることがわかった。つまり、grounding ...