ヒラメ由来 Streptococcus parauberis における薬剤耐性菌の出現と耐性化機構に関する研究

Nagasaki University (長崎大学) 博士( 学術 ) Streptococcus parauberis はウシの乳房炎の原因菌として知られ,魚類ではターボットScophthalmus maximus のレンサ球菌症の原因菌としてヨーロッパではじめて報告された。ヨーロッパ以外では,韓国において眼球突出と鰓の壊死を病徴とするヒラメParalichthys olivaceus のS. parauberis 感染症が報告されている。わが国では2000 年代に入ってヒラメのS. parauberis 感染症の発生が確認され,その後発生地域が拡大して発生率および被害率が高い傾向が各地で見...

Full description

Bibliographic Details
Main Author: Meng, Fei
Format: Other/Unknown Material
Language:English
Published: 2009
Subjects:
Online Access:https://nagasaki-u.repo.nii.ac.jp/record/16477/files/sk180_meng.pdf
Description
Summary:Nagasaki University (長崎大学) 博士( 学術 ) Streptococcus parauberis はウシの乳房炎の原因菌として知られ,魚類ではターボットScophthalmus maximus のレンサ球菌症の原因菌としてヨーロッパではじめて報告された。ヨーロッパ以外では,韓国において眼球突出と鰓の壊死を病徴とするヒラメParalichthys olivaceus のS. parauberis 感染症が報告されている。わが国では2000 年代に入ってヒラメのS. parauberis 感染症の発生が確認され,その後発生地域が拡大して発生率および被害率が高い傾向が各地で見られている。 現在,ヒラメのレンサ球菌症の治療薬としてはテトラサイクリン系の抗生物質のみが承認されているが, S. parauberis の薬剤感受性および耐性菌の出現についての報告はない。本研究では,日本各地で分離された S. parauberis 株について,代表株で作製したウサギ抗血清との凝集性およびテトラサイクリンを含む主要な抗菌剤に対する感受性を調べた。そして薬剤耐性株については,耐性化機構について分子生物学的検討を行った。 (第一章)2002 年から2007 年にかけて西日本各地のヒラメ養殖場で分離されたS. parauberis 64 株は,すべてⅠ型(44 株)あるいはⅡ型(20 株)に分類された。血清型別した64 株を供試菌株として,アンピシリン(ABPC),カナマイシン(KM),エリスロマイシン(EM),リンコマイシン(LCM),塩酸オキシテトラサイクリン(OTC),クロラムフェニコール(CP),オキソリン酸(OA),スルファモノメトキシン(SMMX),トリメトプリム(TMP)の9 種類の抗菌剤の最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。その結果,OA およびSMMX については高いMIC値を示したことから, S. parauberis が本来両薬剤に耐性であると考えられた。また,血清型がⅠ型の44 株中5 株がOTC とEM に高度耐性で,Ⅱ型は20 株すべてがOTC 中等度耐性を示した。 (第二章)見つかったOTC およびEM 耐性株から,耐性遺伝子および耐性遺伝子をコードするトランスポゾンに関連する遺伝子の検出を試みた。その結果,Ⅰ92型耐性株5 株からはOTC 耐性遺伝子tet(S)とEM 耐性遺伝子erm(B)が検出され,Ⅱ型20 株からはOTC 耐性遺伝子 tet(M)およびトランスポゾン916(Tn916)の挿入酵素遺伝子int と切出し酵素遺伝子xis が検出された。このことから,Ⅱ型株にはTn916 様の配列の存在が示唆された。 (第三章)血清型Ⅰ型株から検出された耐性遺伝子のゲノム上の位置をサザンハイブリダイゼーションで調べた。OTC/EM 耐性株からは約11 kbp のプラスミドが検出され,各耐性遺伝子をプローブとしたサザンハイブリダイゼーションの結果,tet(S)はプラスミド上に,erm(B)は染色体DNA 上にコードされていることが判明した。Ⅰ型耐性株5 株に検出されたプラスミドはすべて受容菌Enterococcus faecalis FA2-2 に伝達され,HindⅢによる切断パターンは同じであった。このことから,プラスミドは伝達性であり,同じプラスミドであると考えられた。染色体DNA 上のerm(B)を含むHindⅢ断片をクローニングし,塩基配列を調べたところ, この断片はerm(B)の上流と下流に331 bp のリピート配列を有し,4つのORF からなる断片であり,その塩基配列は他の球菌のプラスミドの配列と92%以上の相同性を示した。したがって,このerm(B)を含む配列はプラスミド由来と推察された。 (第四章)血清型Ⅱ型株にTn916 様のトランスポゾンの存在が示唆されたことから,GenBank から取得したTn916 の塩基配列に基づいて設計したプライマーを用いて,Ⅱ型株の染色体DNA を鋳型にTn916 の4 つの部分に相当する配列のPCRを試みた。その結果,予想される長さの増幅産物がすべてのⅡ型株から得られ,本Tn916 様配列がTn916 と極めて類似する遺伝子構造を有することが推察された。代表株について得られたPCR 産物の塩基配列を調べたところ,他の細菌のTn916 とほぼ同じ配列であった。なお,Tn916 様配列をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、Sau3AI およびHindⅢの切断ハイブリダイゼーションパターンはⅡ型株すべて同一であったが,HincⅡの切断パターンは2 種類認められた。したがって,S. parauberisⅡ型株由来のTn916 様配列には配列に多様性があると考えられた。また,Tn916 ...