樺太アイヌ語における人称のクラスと主格目的格人称接辞―東海岸方言を中心に―

本稿では、樺太アイヌ語東海岸方言の人称の体系をSato(1985)の視点を用いて分析した。特にSato(1985)では扱われていなかった主格と目的格の両方が表示された例も対象とし、主格目的格人称接辞を検討した。その結果、一人称単数主格・二人称単数目的格や二人称単数主格・一人称単数目的格といった主格目的格人称接辞が不規則な形態を取る場合には、人称のクラスの区別が関わるが、目的格が複数になる場合には主格目的格人称接辞が一つの形式しか取らず、クラスの区別がないことを指摘した。最後に、Добротворский(1875)『アイヌ語ロシア語辞典』を対象に、人称のクラスを検討したが、Sato(1985)...

Full description

Bibliographic Details
Main Author: 阪口 諒
Format: Article in Journal/Newspaper
Language:Japanese
Published: 北海道言語研究会 2019
Subjects:
829
Online Access:https://muroran-it.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=10056
http://hdl.handle.net/10258/00010003
https://muroran-it.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=10056&item_no=1&attribute_id=24&file_no=1
Description
Summary:本稿では、樺太アイヌ語東海岸方言の人称の体系をSato(1985)の視点を用いて分析した。特にSato(1985)では扱われていなかった主格と目的格の両方が表示された例も対象とし、主格目的格人称接辞を検討した。その結果、一人称単数主格・二人称単数目的格や二人称単数主格・一人称単数目的格といった主格目的格人称接辞が不規則な形態を取る場合には、人称のクラスの区別が関わるが、目的格が複数になる場合には主格目的格人称接辞が一つの形式しか取らず、クラスの区別がないことを指摘した。最後に、Добротворский(1875)『アイヌ語ロシア語辞典』を対象に、人称のクラスを検討したが、Sato(1985)や本稿の分析が口語においても当てはまることを確認した。最後に樺太アイヌ語東海岸方言の主格目的格人称接辞の一覧を提示した。