サハリン残留・帰国者学習の教材開発─国際理解教育の観点から─

本論では,国際理解教育研究の成果を手掛かりに,サハリン残留とその帰国者が抱える問題を取り上げた教材開発を行う。国際理解教育研究では,「人の移動」に関する教材開発がなされているが,「人の移動」については,「移動した(する)人」と同様,「移動できなかった/できない/しない人」にも着目すべきだと考える。サハリン残留日本人及び韓人は「移動できなかった/できない/しない人」事例の一つである。残留者の中にはすでに帰国した人もいれば,今なお残留している人もいる。それらの経験は重要な学習内容であり,残留は「人の移動」学習のキーコンセプトの一つとして位置づけられるべきと考える。サハリン残留・帰国者学習は,国籍も...

Full description

Bibliographic Details
Main Authors: 太田, 満, オオタ, ミツル, Ota, Mitsuru
Language:Japanese
Published: 共栄大学 2019
Subjects:
Online Access:https://kyoei.repo.nii.ac.jp/record/597/files/KJ01017-069.pdf
Description
Summary:本論では,国際理解教育研究の成果を手掛かりに,サハリン残留とその帰国者が抱える問題を取り上げた教材開発を行う。国際理解教育研究では,「人の移動」に関する教材開発がなされているが,「人の移動」については,「移動した(する)人」と同様,「移動できなかった/できない/しない人」にも着目すべきだと考える。サハリン残留日本人及び韓人は「移動できなかった/できない/しない人」事例の一つである。残留者の中にはすでに帰国した人もいれば,今なお残留している人もいる。それらの経験は重要な学習内容であり,残留は「人の移動」学習のキーコンセプトの一つとして位置づけられるべきと考える。サハリン残留・帰国者学習は,国籍も民族も異なる多様な社会を生きてきた人々の経験と,北東アジア社会に広がる家族の様子を取り上げる点において,国民国家を基本枠組みとした相互理解のための教材とは異なる教育的価値を有する。また,サハリン残留・帰国者学習の中にサハリン先住民の内容を加えることで,戦後も続く植民地主義の影響を考える機会を提供する。 departmental bulletin paper