Deep Circulation in the Antarctic Ocean

南極洋の鉛直南北断面内の循環流について,海鷹丸(東京水産大学練習船)の1956年12月~1957年3月横断観測の資料に基き調べた結果,新しく見出した諸点を摘記し報告した.すなわち中冷水,溶在酸素極大層と極小層の分布,塩分極大層と極小層,燐酸塩極層等を図示した断面図,および中冷水水平分布地形図により考察した.1)亜熱帯収束は夏季43°S附近にあり,亜熱帯系水は塩分35‰以上,水温10℃以上で,厚さ400~600m深に及ぶ.2)南極収束は49°~50°S当季,極前線帯は43°~49°S(偏西風暴風圏,西風漂流帯)にある.3)夏季南極圏(50°~70°S)は中冷水(-1.8°~+1.35℃)で明示さ...

Full description

Bibliographic Details
Main Author: Michitaka UDA
Format: Article in Journal/Newspaper
Language:English
Japanese
Published: National Institute of Polar Research 1961
Subjects:
Online Access:https://doi.org/10.15094/00007030
https://doaj.org/article/9985118918d84f9b96b403939eec370e
Description
Summary:南極洋の鉛直南北断面内の循環流について,海鷹丸(東京水産大学練習船)の1956年12月~1957年3月横断観測の資料に基き調べた結果,新しく見出した諸点を摘記し報告した.すなわち中冷水,溶在酸素極大層と極小層の分布,塩分極大層と極小層,燐酸塩極層等を図示した断面図,および中冷水水平分布地形図により考察した.1)亜熱帯収束は夏季43°S附近にあり,亜熱帯系水は塩分35‰以上,水温10℃以上で,厚さ400~600m深に及ぶ.2)南極収束は49°~50°S当季,極前線帯は43°~49°S(偏西風暴風圏,西風漂流帯)にある.3)夏季南極圏(50°~70°S)は中冷水(-1.8°~+1.35℃)で明示され,中核深度は66°~69°Sで75m深,58°~64°Sで100m深,50°Sで160m深と北上するほど深い.4)南極収束附近で,表層から降下した南極中間層水は亜熱帯系水の下で1000m深に来ている.溶在酸素2次極大は中層流の軸にほぼ一致するか,塩分極小の中間層水の軸より浅い.(等密度面上の推算流速を試みに求めた.)5)極前線帯は酸素第2極大と塩分極小で識別される.6)上部深層水は1500m深(45°S以北)から南極圏内の300~800m深の上層まで昇る.中暖水(水温中層極大)と酸素極小の層上部の燐酸塩極大層および,下方の塩分極大層(34.7%前後)によって明示された.7)南極大陸に近い64°~69°Sでは強盛な鉛直対流と水塊の沈降が低水温(O℃以下)および酸素増多,塩分低下によって証示される.8)54°~64°S間の湧昇水域は純南極洋圏内で最も生産力高く,鯨の最好良漁場帯に相当し,鯨餌のユーファウジアの最濃密帯と一致することを証示した.この水帯は南極収束線とパックアイス帯にはさまれて位置する.9)64°~69°Sの沈降域は特殊水帯で真南極洋水帯ともいえよう.ここから底層水,底層流が各洋水に向って発源する.60°~68°Sには南極洋表層水,深層水の鉛直混合が盛んに起る.10)54°~64°Sの最良生産帯は中冷水-1℃以下の水域で,東風皮流と西風皮流の間の渦流の系列をみる渦度帯に相当する.なお以上の調査には海鷹丸のデーターの外にディスカバリー号(英),ブラテク号(ノルエー)のデーターも入れてしらべた.