小笠原諸島父島における広東住血線虫の疫学調査

1983年7月22日から同8月10日まで小笠原諸島父島に滞在し,アフリカマイマイAchatina fulicaとネズミRattus rattusにおける広東住血線虫Angiostrongylus cantonensisの感染状況の調査,および島民の血清中の抗広東住血線虫抗体の有無を調べ次のような結果が得られた。(1)父島の8地区(小笠原支庁舎周辺,二見港周辺,電々公社周辺,清瀬団地周辺,村民会館周辺,小港海岸,三日月山,夜明山)で採集したアフリカマイマイ300個体について広東住血線虫第3期幼虫の感染状況を調査した。その結果は104個体(34.7%)に感染が認められ,感染率と貝の大きさとの関係を...

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Bibliographic Details
Main Authors: 金沢, 保, 門沢, 秀一, 井出, 光男, 鴇田, 律, 西川, 立人, 布山, 隆史, 野瀬, 晴彦, 花ケ崎, 和夫, 横川, 宗雄, 吉田, 亮, KANAZAWA, Tamotsu, MONZAWA, Shuichi, IDE, Mitsuo, TOKITA, Tadashi, NISHIKAWA, Tatsuto, NUNOYAMA, Takashi, NOSE, Haruhiko, HANAGASAKI, Kazuo, YOKOGAWA, Muneo, YOSHIDA, Ryo
Other Authors: 千葉大学医学部寄生虫学教室 / 千葉大学医学部 / 千葉大学医学部公衆衛生学教室
Format: Article in Journal/Newspaper
Language:Japanese
Published: 千葉医学会 1984
Subjects:
Online Access:https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900041831/
https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900041831/KJ00004511305.pdf
Description
Summary:1983年7月22日から同8月10日まで小笠原諸島父島に滞在し,アフリカマイマイAchatina fulicaとネズミRattus rattusにおける広東住血線虫Angiostrongylus cantonensisの感染状況の調査,および島民の血清中の抗広東住血線虫抗体の有無を調べ次のような結果が得られた。(1)父島の8地区(小笠原支庁舎周辺,二見港周辺,電々公社周辺,清瀬団地周辺,村民会館周辺,小港海岸,三日月山,夜明山)で採集したアフリカマイマイ300個体について広東住血線虫第3期幼虫の感染状況を調査した。その結果は104個体(34.7%)に感染が認められ,感染率と貝の大きさとの関係をみると,殻長が7cmを越えるものでは急激に感染率が高くなっていた。これを地域別にみると人家の集まっている居住地域と山林などの非居住地域での感染率に差異がみられ,居住地域の感染率(21.5%)より非居住地域の感染率(64.8%)の方が高かった。(2)ネズミは5匹が捕獲され,すべてクマネズミであった。そのうちの1匹より広東住血線虫が検出された。(3)島民の血清18検体について,ゲル内沈降反応および補体結合反応を用いて抗広東住血線虫抗体の検出を試みたがすべて陰性であった。以上より,今まで小笠原諸島父島では広東住血線虫の人への感染は知られていないが,常に感染の危険はあるものと考えられる。島民に対しこの寄生虫について注意を促すとともに,アフリカマイマイが本土に持ち込まれぬよう厳重に警戒する必要がある。 Surveys of Angiostrongylus cantonensis infections in Rattus rattus and in Achatina fulica were carried out from July 22th to August 10th 1983 in Chichijima, Ogasawara Islands. A survey of anti-A. cantonensis antibody in 18 persons living in Chichijima was also carried out. The results obtained were as follows. (1) One hundred and four of three hundre