Slc:WistarクローズドコロニーラットおよびZucker fatty由来クローズドコロニーラットの遺伝的プロファイル解析に関する研究

実験動物としてのラットは、ドブネズミ(学名Rattus norvegicus, 英名Norway rat)を馴化したものであり、同じクマネズミ属に含まれるクマネズミ(学名Rattus rattus, 英名black rat)とは異なる。ラットは、栄養、代謝、および生理学上の特徴がヒトと類似している点が多いことから、医学、薬理学、毒性学、生物学、栄養学、行動、心理学、免疫学、あるいは腫瘍学などの幅広い分野での実験動物および医薬品等の毒性試験や安全性試験に広く使用されている。遺伝的統御の違いから、近交系(Inbred strains)とクローズドコロニー(Outbred ratsとも言う)に大別さ...

Full description

Bibliographic Details
Main Authors: 中西 聡, Nakanishi Satoshi
Format: Thesis
Language:Japanese
Published: 2017
Subjects:
Online Access:https://az.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=5183
http://id.nii.ac.jp/1112/00005154/
https://az.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=5183&item_no=1&attribute_id=20&file_no=2
https://az.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=5183&item_no=1&attribute_id=20&file_no=1
Description
Summary:実験動物としてのラットは、ドブネズミ(学名Rattus norvegicus, 英名Norway rat)を馴化したものであり、同じクマネズミ属に含まれるクマネズミ(学名Rattus rattus, 英名black rat)とは異なる。ラットは、栄養、代謝、および生理学上の特徴がヒトと類似している点が多いことから、医学、薬理学、毒性学、生物学、栄養学、行動、心理学、免疫学、あるいは腫瘍学などの幅広い分野での実験動物および医薬品等の毒性試験や安全性試験に広く使用されている。遺伝的統御の違いから、近交系(Inbred strains)とクローズドコロニー(Outbred ratsとも言う)に大別される。近交系とは兄妹交配を20代以上継続し、ほぼすべての遺伝子座がホモ型に固定した遺伝的に均一な動物である。現在、近交系ラットは世界中で300系統以上が樹立されている。一方、クローズドコロニーは、5年以上にわたって他の群からの遺伝子の移入がなく、一定の集団のみで繁殖を継続するので、一般的に、個体ごとに遺伝子組成が異なる。 実験用ラットは、これまでに選抜育種、他系統との交雑や遺伝子改変技術の進歩によって、研究目的に応じて様々なラット系統が開発されてきた。研究目的にあった遺伝的特徴を持ったラットを研究に用いることが求められるので、ジェノタイピングにより遺伝的プロファイル解析を行い、その遺伝的な特性を明らかにすることが重要である。その為には、正確、迅速、簡便で効率的なジェノタイピング法の確立や遺伝多型マーカーを用いた遺伝的モニタリングシステムの構築は必須である。本研究の目的は、遺伝的プロファイル解析に有用な遺伝多型マーカーを用いてSlc:WistarクローズドコロニーラットおよびZucker fatty由来クローズドコロニーラットの遺伝的特徴を明らかすることであり、さらに、遺伝的品質管理に適した迅速で簡便なジェノタイピング法についての技術開発を行うことである。 第1章では、第3世代の遺伝多型マーカーであるSSLPマーカーをクローズドコロニーラットの遺伝的プロファイル解析に適応し、その有用性を検討した。クローズドコロニーラットであるSlc:Wistarラットの様々な表現形質が、F344近交系ラットと類似している問題について、ゲノム全域に散在する27個のSSLPマーカーを選定してSlc:WistarラットとF344ラットの遺伝的プロファイル解析を行った。本章で選定した27個のSSLPマーカーは近交系ラットのみならず、クローズドコロニーラットの遺伝的プロファイル解析に有効であることが示された。Slc:Wistarラットは、85%の遺伝子座が特定の対立遺伝子に固定しており、遺伝的多様性が低いことが示された。そして、それらの遺伝子型はF344ラットの遺伝子型と同一であった。以上の結果から、Slc: Wistar ラットは遺伝的多様性が著しく低く、Slc:WistarラットとF344近交系ラットの遺伝的プロファイルには類似性が高いことが明らかになった。 第2章では、東京医科大学で維持されていたZFラットコロニーを由来とする肥満を示すSlc:ZFラットコロニーと肥満、糖尿病を示すHos:ZFDMラットコロニーの表現型の相違を探るため遺伝的プロファイル解析を行った。はじめにSlc:ZFラットとHos:ZFDM ラットの遺伝的プロファイルを作成するために、第1章で選定した27個のSSLPマーカーを用いてゲノムDNA抽出を必要としない迅速で簡易なジェノタイピングシステムにて遺伝的プロファイルを作成した。次に、これら2つのラットコロニーの遺伝的特徴を明らかにするために、東京医科大学で維持されていたZFラットコロニーを由来とするKZFラット系統とKZCラット系統の遺伝的プロファイルを比較した。最後に、染色体上の分散状態を考慮してY染色体を除く全ての常染色体とX染色体上に各3~4個のSSLPマーカーを選択し、合計72個のSSLPマーカーを加えてより詳細な遺伝的プロファイル解析を行った。Slc:ZFラットとHos:ZFDMラットの2つのクローズドコロニーラットは、共に約90%の遺伝子座が特定の対立遺伝子に固定していた。また、両コロニーは同じコロニーを起源とするにもかかわらず異なる対立遺伝子を有する遺伝子座が約30%であり、これが、2つのクローズドコロニーラットの表現型の相違の基盤となっていると考えられた。本研究で行った、Slc:ZFラットとHos:ZFDMラットの遺伝的プロファイル解析は、2型糖尿病の発症と繁殖性に関連する遺伝的要因を明らかにするのに貢献できると結論づけられた。 ...