Metamorphic evolution and its implication for tectonic process in the central Sør Rondane Mountains, East Antarctica

はじめに 超大陸の形成は地球誕生以来数回しか起きてないと考えられており、また超大陸形成と時期と同じくして、超高温変成岩(Harley, 1984)や超高圧変成岩(Chopin, 1984)の形成、全球凍結(Hoffman, 1998)、カンブリア大爆発 (例えばGould、1990) などが起きている。このことは大陸の集合・離散のプロセスは、地球内部および表層環境の劇的な変化に大きく関わっていることを示しており、惑星地球の進化を明らかにする上で、大きな役割を果たすと考えられる。 ゴンドワナ超大陸はパンゲア(約2億5千万年前)の次に新しい超大陸であり、現在のアフリカ、南米、オーストラリア、インド...

Full description

Bibliographic Details
Main Authors: 足立 達朗, アダチ タツロウ, Tatsuro ADACHI
Format: Thesis
Language:English
Published: 2010
Subjects:
Online Access:https://ir.soken.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=1679
http://id.nii.ac.jp/1013/00001653/
Description
Summary:はじめに 超大陸の形成は地球誕生以来数回しか起きてないと考えられており、また超大陸形成と時期と同じくして、超高温変成岩(Harley, 1984)や超高圧変成岩(Chopin, 1984)の形成、全球凍結(Hoffman, 1998)、カンブリア大爆発 (例えばGould、1990) などが起きている。このことは大陸の集合・離散のプロセスは、地球内部および表層環境の劇的な変化に大きく関わっていることを示しており、惑星地球の進化を明らかにする上で、大きな役割を果たすと考えられる。 ゴンドワナ超大陸はパンゲア(約2億5千万年前)の次に新しい超大陸であり、現在のアフリカ、南米、オーストラリア、インドそして南極が集合して形成されたと考えられている。南極大陸は現在周囲をプレート拡大境界である海嶺に囲まれており、他のゴンドワナ構成要素と比較して新しい時代の地殻変動の影響が小さい。このことは、南極大陸の地質学的研究によって、超大陸の集合・分離過程をより精密に解析するごとが可能である。 日本における南極大陸の地質学的研究は、 日本南極地域観測隊によって昭和基地を中心とした地域を対象に実施されてきた。これらの地域は、ゴンドワナ超大陸形成時の衝突境界であったと考えられており (例えばJacobs & Thomas, 2004)、超大陸形成の素過程が保存されていることが期待できる。そういった露岩域のひとつであるセールロンダーネ山地は、1960年前後のベルギー隊による先駆的調査、1985~1992年の日本南極地域観測隊の全域調査の結果、構成岩石種、地質構造、年代などの基礎データが提示された (例えばShiraishi et al., 1997)。またそれに基づき、この地域は2つの地質体が高角境界で接する大陸衝突帯であると説明された (Osanai et al., 1992)。しかしながら、研究者が提示してきた多数のデータは、統一的に解釈されておらず、地域全体の地史を充分に説明するテクトニックモデルは提唱されてこなかった。そこで本研究では、第49次日本南極地域観測隊で行った野外調査と、そこで採取した岩石の変成岩岩石学的、年代学的解析結果に基づいて、セールロンダーネ山地のテクトニクスを明らかにすることを目的とした。 解析項目・結果 1.変成経路 鉱物組織、各種地質温度圧力計およびザクロ石の累帯構造パターンなどの解析を行い、各地域に分布する変成岩の変成履歴を解析した。その結果、セールロンダーネ山地に産する変成岩類は少なくとも、主にアウストカンパーネ地域に産出し、ピーク変成条件付近で減圧することを特徴とするA-type、主にブラットニーパネ地域に産出し、ピーク変成条件付近で加圧することが特徴であるB-type、主にルンケリッゲン地域に産出し、他のタイプとは異なり昇温期の情報を保持しているL-typeの3タイプに分類できることが分かった。 A-typeにはザクロ石が菫青石に分解するような減圧過程を示す。ピーク変成条件は約800℃、 0.4-0.5 GPaが見積もられ、その後の冷却過程でカ加水後退変成作用を受けている。B-typeは、ザクロ石、珪線石からスピネル、コランダムが形成される反応が見られ、ザクロ石は縁辺部でCaが増加する組成変化を示すなど、加圧過程を示す組織が観察される。ピーク変成条件は約800℃、 0.7-0.8 GPaであり、その後の冷却過程で加水後退変成作用を受けている。一方、L-typeには初生的な緑簾石、石英の共生が認められる。またピーク変成条件は約600‐700℃、 0.5-0.8 GPaが見積もられ、A, B-typeと比較して相対的に低温条件を示す。またザクロ石は核部から縁辺部にかけてMnが減少するような昇温過程を示唆する組成変化を示すなど、A,, B-typeとは異なる岩石学的特徴を保持している。 2.Ti-in‐QtZ温度計 岩石学的な解析によって、地域ごとに変成経路が異なることが示されたが、変成条件が見積もり可能な鉱物共生を含む岩石が限定されていること、加水後退変成作用の影響で情報が改変されていること、などの理由で変成条件の空間分布の把握は困難である。 そこで岩石中に一般的に含まれる石英にTi-in-Qtz温度計(Wark & Watson, 2006)を適用して、変成条件の空間分布を補完した。特に、セールロンダーネ山地の広域で、後退変成作用を受けた岩変成条件の空間分布を補完した。特に、セールロンダーネ山地の広域で、後退変成作用を受けた岩石の石英中にルチル離溶組織が認められる。離溶ルチルの存在は、かつて高温条件を経験していたことを示し、ピーク温度条件の復元が可能であることを示唆する。 ...