Biological control of dimethylsulfoniopropionate and dimethylsulfide production in the Southern Ocean

近年,北極海や南極半島沿岸域など高緯度海域において地球温暖化の兆しが報告されている.地球規模の気候変化の予測には,生物圏と気候変動との関わりの理解が必要である.特に,海洋における生物生産過程と気候変動との関わりの解明が注目されており,中でも硫化ジメチル(以降,DMSと記す)は,海洋の生物活動が媒介する気候変動要因として注目されている.DMSは海洋から大気に放出される生物起源の揮発性硫黄化合物のひとつで, 機の香りの主成分として知られる.DMSが大気中で酸化されると,二酸化硫黄やメタンスルホン酸になる.これらの酸化物は,さらに酸化され,エアロゾルや雲の凝結核を生成し,そこからできた雲が,地表面に...

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Main Authors: 笠松 伸江, カサマツ ノブエ, Nobue KASAMATSU
Format: Thesis
Language:English
Published: 2005
Subjects:
Online Access:https://ir.soken.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=829
http://id.nii.ac.jp/1013/00000829/
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spelling ftsokendaiuniv:oai:ir.soken.ac.jp:00000829 2023-05-15T18:26:10+02:00 Biological control of dimethylsulfoniopropionate and dimethylsulfide production in the Southern Ocean 笠松 伸江 カサマツ ノブエ Nobue KASAMATSU 2005-03-24 https://ir.soken.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=829 http://id.nii.ac.jp/1013/00000829/ en eng https://ir.soken.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=829 http://id.nii.ac.jp/1013/00000829/ 総研大甲第857号 Thesis or Dissertation 2005 ftsokendaiuniv 2022-11-20T21:31:44Z 近年,北極海や南極半島沿岸域など高緯度海域において地球温暖化の兆しが報告されている.地球規模の気候変化の予測には,生物圏と気候変動との関わりの理解が必要である.特に,海洋における生物生産過程と気候変動との関わりの解明が注目されており,中でも硫化ジメチル(以降,DMSと記す)は,海洋の生物活動が媒介する気候変動要因として注目されている.DMSは海洋から大気に放出される生物起源の揮発性硫黄化合物のひとつで, 機の香りの主成分として知られる.DMSが大気中で酸化されると,二酸化硫黄やメタンスルホン酸になる.これらの酸化物は,さらに酸化され,エアロゾルや雲の凝結核を生成し,そこからできた雲が,地表面に届く太陽放射を妨げる.そのため,DMSは,地球温暖化に負の影響を与える物質の源であるという点で重要視されている. 海藻や植物プランクトン細胞内で生成するジメチルスルフォニオプロピオネート(以降,粒状態DMSPと記す)が,海水中に溶存し(以降,溶存態DMSPと記す),DMSP分解酵素によって分解されることにより,DMSが生成する.これまで,海洋基礎生産が比較的高い高緯度海域においてDMS濃度が高いことが報告されてきた.しかしながら,植物プランクトン細胞内でDMSPが生成され,その細胞内DMSPからDMSが生成するまでの複雑な生物・化学的プロセスや,生成されたDMSが海水中で分解されるプロセスが,特に高緯度海域で定量化されていないため,これらの高濃度をもたらす原因の解明には未だ至っていない,そこで,DMSの生成経路に注目しながら,南極海における生物活動がどのようにDMS濃度を制御しているのかを明らかにすることを目的に研究を行った. 南大洋インド洋区で実施された,夏期シーズンをカバーする観測(1-2月)から,1)粒状態DMSP濃度の空間分布のパターンと植物プランクトン現存量の指標となる色素量(Chl.a濃度)の空間分布のパターンが異なっていた,2)2002年1月,非常に高濃度のDMS(49 nmol・L -1 )が氷縁域に存在した,という現象が見られた.これらの原因を明らかにするため, 植物プランクトン種および生理活性の影響,動物プランクトンの影響について考察した. これまで,室内培養実験の結果から,植物プランクトン種によって単位Chl.aあたりの細胞内DMSP量が異なることが報告されている.しかしながら,観測中,網胞内DMSP 量が多いと報告されている植物プランクトンが多く存在していた海域において粒状態DMSP濃度が高いとは限らなかった.植物プランクトンの室内培養実験を行ったところ,植物プランクトンが増殖を停止している減衰期における粒状態DMSP/Chl.a比(細胞内DMSP量の指標)は,植物プランクトンが活発に増殖している対数増殖期の約5-10倍に増加した.植物プランクトンは,生長を停止している減衰期にも細胞内にDMSPを生成し続けることが明らかになった.このことから,植物プランクトン種のみならず,植物プランクトンの生理活性状態(生長段階)も海水中における粒状態DMSP濃度を決定する要因となることが示唆された. 植物プランクトンを摂餌する動物プランクトンの一種であるカイアシ類を用いた実験の結果から,動物プランクトンは,植物プランクトン細胞内のDMSPを海水中に溶存させ,溶存態DMSPを生成することが報告されている.南極海の大型動物プランクトン優占種であるナンキョクオキアミおよびサルパを用いて船上培養実験したところ,ナンキョクオキアミの摂館は溶存態DMSPおよびDMSを生成するのに対し,サルパの摂館は溶存態DMSP およびDMSを生成しないことが明らかになった.オキアミは植物プランクトン細胞を破砕しながら摂餌する.一方,サルパは植物プランクトン細胞を丸呑みして消化管内で栄養分を吸収する.このような動物プランクトンの摂餌形態の差が溶存態DMSPおよびDMS 生成量の差につながったと考えられた.オキアミの溶存態DMSP+DMS生成速度は,一個体あたり,3nmol-溶存態DMSP+DMS・h -1 であり,オキアミの摂餌によって粒状態DMSPからのすみやかな溶存態DMSPおよびDMS生成が行われると考えられる.これにより, オキアミの生物量の増減が海洋における溶存態DMSP濃度およびDMS濃度に大きく影響することが示唆された. ... Thesis Southern Ocean The Graduate University for Advanced Studies, Japan: Sokendai Repository Southern Ocean
institution Open Polar
collection The Graduate University for Advanced Studies, Japan: Sokendai Repository
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description 近年,北極海や南極半島沿岸域など高緯度海域において地球温暖化の兆しが報告されている.地球規模の気候変化の予測には,生物圏と気候変動との関わりの理解が必要である.特に,海洋における生物生産過程と気候変動との関わりの解明が注目されており,中でも硫化ジメチル(以降,DMSと記す)は,海洋の生物活動が媒介する気候変動要因として注目されている.DMSは海洋から大気に放出される生物起源の揮発性硫黄化合物のひとつで, 機の香りの主成分として知られる.DMSが大気中で酸化されると,二酸化硫黄やメタンスルホン酸になる.これらの酸化物は,さらに酸化され,エアロゾルや雲の凝結核を生成し,そこからできた雲が,地表面に届く太陽放射を妨げる.そのため,DMSは,地球温暖化に負の影響を与える物質の源であるという点で重要視されている. 海藻や植物プランクトン細胞内で生成するジメチルスルフォニオプロピオネート(以降,粒状態DMSPと記す)が,海水中に溶存し(以降,溶存態DMSPと記す),DMSP分解酵素によって分解されることにより,DMSが生成する.これまで,海洋基礎生産が比較的高い高緯度海域においてDMS濃度が高いことが報告されてきた.しかしながら,植物プランクトン細胞内でDMSPが生成され,その細胞内DMSPからDMSが生成するまでの複雑な生物・化学的プロセスや,生成されたDMSが海水中で分解されるプロセスが,特に高緯度海域で定量化されていないため,これらの高濃度をもたらす原因の解明には未だ至っていない,そこで,DMSの生成経路に注目しながら,南極海における生物活動がどのようにDMS濃度を制御しているのかを明らかにすることを目的に研究を行った. 南大洋インド洋区で実施された,夏期シーズンをカバーする観測(1-2月)から,1)粒状態DMSP濃度の空間分布のパターンと植物プランクトン現存量の指標となる色素量(Chl.a濃度)の空間分布のパターンが異なっていた,2)2002年1月,非常に高濃度のDMS(49 nmol・L -1 )が氷縁域に存在した,という現象が見られた.これらの原因を明らかにするため, 植物プランクトン種および生理活性の影響,動物プランクトンの影響について考察した. これまで,室内培養実験の結果から,植物プランクトン種によって単位Chl.aあたりの細胞内DMSP量が異なることが報告されている.しかしながら,観測中,網胞内DMSP 量が多いと報告されている植物プランクトンが多く存在していた海域において粒状態DMSP濃度が高いとは限らなかった.植物プランクトンの室内培養実験を行ったところ,植物プランクトンが増殖を停止している減衰期における粒状態DMSP/Chl.a比(細胞内DMSP量の指標)は,植物プランクトンが活発に増殖している対数増殖期の約5-10倍に増加した.植物プランクトンは,生長を停止している減衰期にも細胞内にDMSPを生成し続けることが明らかになった.このことから,植物プランクトン種のみならず,植物プランクトンの生理活性状態(生長段階)も海水中における粒状態DMSP濃度を決定する要因となることが示唆された. 植物プランクトンを摂餌する動物プランクトンの一種であるカイアシ類を用いた実験の結果から,動物プランクトンは,植物プランクトン細胞内のDMSPを海水中に溶存させ,溶存態DMSPを生成することが報告されている.南極海の大型動物プランクトン優占種であるナンキョクオキアミおよびサルパを用いて船上培養実験したところ,ナンキョクオキアミの摂館は溶存態DMSPおよびDMSを生成するのに対し,サルパの摂館は溶存態DMSP およびDMSを生成しないことが明らかになった.オキアミは植物プランクトン細胞を破砕しながら摂餌する.一方,サルパは植物プランクトン細胞を丸呑みして消化管内で栄養分を吸収する.このような動物プランクトンの摂餌形態の差が溶存態DMSPおよびDMS 生成量の差につながったと考えられた.オキアミの溶存態DMSP+DMS生成速度は,一個体あたり,3nmol-溶存態DMSP+DMS・h -1 であり,オキアミの摂餌によって粒状態DMSPからのすみやかな溶存態DMSPおよびDMS生成が行われると考えられる.これにより, オキアミの生物量の増減が海洋における溶存態DMSP濃度およびDMS濃度に大きく影響することが示唆された. ...
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