Petrology of the CR chondrites

隕石は,太陽系生成初期の星雲ガスから塵,微惑星,原始惑星へと天体が成長してゆくいろいろな段階を代表する物質である.したがって,太陽系星雲での出来事や,惑星の形成・進化の初期のプロセスを復元するだめの貴重な手がかりとなる.咀石母天体の復元を考える上で,初期の出来事の一つである水質変成が母天体形成前の星雲中で起きたのか,または母天体形成後におきたのかを解明することが,本研究の目的である. 隕石の中で,炭素質隕石は,太陽系形成直後の微惑星を形成していた物質と考えられており,母天体形成後に生じる熱や圧力による変化を受けていないものが多い.そのため,炭素質隕石を詳しく研究することにより,水質変成の形成場...

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Bibliographic Details
Main Authors: 市川 収, イチカワ オサム, Osamu ICHIKAWA
Format: Thesis
Language:English
Published: 1997
Subjects:
Online Access:https://ir.soken.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=796
http://id.nii.ac.jp/1013/00000796/
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spelling ftsokendaiuniv:oai:ir.soken.ac.jp:00000796 2023-05-15T18:48:00+02:00 Petrology of the CR chondrites 市川 収 イチカワ オサム Osamu ICHIKAWA 1997-09-30 https://ir.soken.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=796 http://id.nii.ac.jp/1013/00000796/ en eng https://ir.soken.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=796 http://id.nii.ac.jp/1013/00000796/ 総研大甲第294号 Thesis or Dissertation 1997 ftsokendaiuniv 2022-11-20T21:31:36Z 隕石は,太陽系生成初期の星雲ガスから塵,微惑星,原始惑星へと天体が成長してゆくいろいろな段階を代表する物質である.したがって,太陽系星雲での出来事や,惑星の形成・進化の初期のプロセスを復元するだめの貴重な手がかりとなる.咀石母天体の復元を考える上で,初期の出来事の一つである水質変成が母天体形成前の星雲中で起きたのか,または母天体形成後におきたのかを解明することが,本研究の目的である. 隕石の中で,炭素質隕石は,太陽系形成直後の微惑星を形成していた物質と考えられており,母天体形成後に生じる熱や圧力による変化を受けていないものが多い.そのため,炭素質隕石を詳しく研究することにより,水質変成の形成場を推定できることが期待される.水質変成を被っている炭素質隕石にはOR,CI及びCMタイプがあるが,CRタイプは他のタイプには見られないような弱い変成程度のものが観察されるため,より初期の水質変成過程を明らかにできる. 稀少なCRタイプの炭素質隕石は近年,酸素同位体比や窒素同位体比および全岩組成や鉱物学的な特徴から再分類されている.そこで,本研究では,まず国立極地研究所が保有する8個のORタイプとされてきた南極産隕石について,岩石学的特徴,鉱物学的特徴及び酸素同位体比の3つの観点から,総合的な分類を行った.その結果,6個については従来からCR隕石として知られている特徴をもつ隅石であるが,他の2個については,それぞれ,今までに報告されている5つのサブタイプのどれにも属さない新たなサブタイプの隕石であることがわかった. CR隕石の顕著な鉱物学的特徴として,コンドリュール中のカンラン石のクロム含有量が比較的高い(1.2wt%)ことがあげられ,還元的環境下でコンドリュールが形成されたことを示す.このことは,メタルのCo/Ni比がソーラー・アバンダンスに等しいために,星雲中から直接凝縮によってできたと考えられることと矛盾しない. CR隕石の水質変成については,次の結果を得た. 個々のCR隕石の各コンドリュールごとに含まれる含水層状珪酸塩鉱物(以下フィロシリケートという)の組成はSi-Mg-Fe三角ダイアダラム上のスメクタイトの固溶体組成と蛇紋石の固溶体組成を示す線の間で,鉄に富む範囲にプロットされるものから,マグネシウムに富む範囲にプロットされるものまで変化に富む.しかも,コンドリュール中の石基ガラスは鉄に富むフィロシリケートを持つものにのみ残っているのに対し,マグネシウムに富むフィロシリケートを含むコンドリュールには残っておらず,また輝石の一部も変質しているという特徴がある.いっぽう,かんらん石の変質は見られない.このように,CR隕石では輝石がカンラン石よりも先行して変成するという事実は,地球上の液体の水が関与した変質とは対照的である. この結果から,コンドリュールの変成初期では石基ガラスのみが変成することによって鉄に富んだフィロシリケートを,変成後期では輝石が変成しマグネシウムに富んだフィロシリケートを生成することが明らかになった.コンドリュール中にその先駆物質である石基ガラスと輝石が変質鉱物であるフィロシリケートと共存している部分を見出し,各鉱物の化学組成から以下の水質変成の反応式を得た. [12NaAlSi3O8+4CaAl2Si2O8+19SiO2+2MgSiO3+CaSiO3]+41MgSiO3+64.6FeO+59.2H2O+5CO2 Glass Enstaite → 5(Mg4Fe6)Al2Si6Al2O20(OH16+9.6(Mg2.4Fe3.6)Si8O20(OH)4+ 5CaCO3+6Na2O Chlorite (serpentine) Talc (semectite) Calcite コンドリュール中での水質変成過程が隕石母天体集積以前の星雲ガス中で起きたのか,または,集積後の隕石母天体上で起きたのかについては,直接的な証拠はみつかっていない.しかし,個々の隕石や隕石中の各コンドリュールの変成程度が大きく異ることは,星雲中での変成よりもむしろ隕石母天体中での変成の場所(表層からの深さ)の違いを示唆する.隕石母天体中で水蒸気による水質変成を受けた場合は,深さによって温度や圧力が異なり,それがコンドリュールの変成程度の違いに現れるであろう.様々な変成程度のコンドリュールが1つの隕石中に混在することは,ガーデニングにより母天体が掘り起こされ,異なる深さにあったコンドリュールが混じりあったと考えることができる.しかし,コンドリュール中のガラスが直接隕石のマトリックスと接している組織がみられたことから,CR隕石は母天体上での最終的な岩石化を被った後は水質変成を受けていないと結論づけた. ... Thesis 国立極地研究所 The Graduate University for Advanced Studies, Japan: Sokendai Repository
institution Open Polar
collection The Graduate University for Advanced Studies, Japan: Sokendai Repository
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language English
description 隕石は,太陽系生成初期の星雲ガスから塵,微惑星,原始惑星へと天体が成長してゆくいろいろな段階を代表する物質である.したがって,太陽系星雲での出来事や,惑星の形成・進化の初期のプロセスを復元するだめの貴重な手がかりとなる.咀石母天体の復元を考える上で,初期の出来事の一つである水質変成が母天体形成前の星雲中で起きたのか,または母天体形成後におきたのかを解明することが,本研究の目的である. 隕石の中で,炭素質隕石は,太陽系形成直後の微惑星を形成していた物質と考えられており,母天体形成後に生じる熱や圧力による変化を受けていないものが多い.そのため,炭素質隕石を詳しく研究することにより,水質変成の形成場を推定できることが期待される.水質変成を被っている炭素質隕石にはOR,CI及びCMタイプがあるが,CRタイプは他のタイプには見られないような弱い変成程度のものが観察されるため,より初期の水質変成過程を明らかにできる. 稀少なCRタイプの炭素質隕石は近年,酸素同位体比や窒素同位体比および全岩組成や鉱物学的な特徴から再分類されている.そこで,本研究では,まず国立極地研究所が保有する8個のORタイプとされてきた南極産隕石について,岩石学的特徴,鉱物学的特徴及び酸素同位体比の3つの観点から,総合的な分類を行った.その結果,6個については従来からCR隕石として知られている特徴をもつ隅石であるが,他の2個については,それぞれ,今までに報告されている5つのサブタイプのどれにも属さない新たなサブタイプの隕石であることがわかった. CR隕石の顕著な鉱物学的特徴として,コンドリュール中のカンラン石のクロム含有量が比較的高い(1.2wt%)ことがあげられ,還元的環境下でコンドリュールが形成されたことを示す.このことは,メタルのCo/Ni比がソーラー・アバンダンスに等しいために,星雲中から直接凝縮によってできたと考えられることと矛盾しない. CR隕石の水質変成については,次の結果を得た. 個々のCR隕石の各コンドリュールごとに含まれる含水層状珪酸塩鉱物(以下フィロシリケートという)の組成はSi-Mg-Fe三角ダイアダラム上のスメクタイトの固溶体組成と蛇紋石の固溶体組成を示す線の間で,鉄に富む範囲にプロットされるものから,マグネシウムに富む範囲にプロットされるものまで変化に富む.しかも,コンドリュール中の石基ガラスは鉄に富むフィロシリケートを持つものにのみ残っているのに対し,マグネシウムに富むフィロシリケートを含むコンドリュールには残っておらず,また輝石の一部も変質しているという特徴がある.いっぽう,かんらん石の変質は見られない.このように,CR隕石では輝石がカンラン石よりも先行して変成するという事実は,地球上の液体の水が関与した変質とは対照的である. この結果から,コンドリュールの変成初期では石基ガラスのみが変成することによって鉄に富んだフィロシリケートを,変成後期では輝石が変成しマグネシウムに富んだフィロシリケートを生成することが明らかになった.コンドリュール中にその先駆物質である石基ガラスと輝石が変質鉱物であるフィロシリケートと共存している部分を見出し,各鉱物の化学組成から以下の水質変成の反応式を得た. [12NaAlSi3O8+4CaAl2Si2O8+19SiO2+2MgSiO3+CaSiO3]+41MgSiO3+64.6FeO+59.2H2O+5CO2 Glass Enstaite → 5(Mg4Fe6)Al2Si6Al2O20(OH16+9.6(Mg2.4Fe3.6)Si8O20(OH)4+ 5CaCO3+6Na2O Chlorite (serpentine) Talc (semectite) Calcite コンドリュール中での水質変成過程が隕石母天体集積以前の星雲ガス中で起きたのか,または,集積後の隕石母天体上で起きたのかについては,直接的な証拠はみつかっていない.しかし,個々の隕石や隕石中の各コンドリュールの変成程度が大きく異ることは,星雲中での変成よりもむしろ隕石母天体中での変成の場所(表層からの深さ)の違いを示唆する.隕石母天体中で水蒸気による水質変成を受けた場合は,深さによって温度や圧力が異なり,それがコンドリュールの変成程度の違いに現れるであろう.様々な変成程度のコンドリュールが1つの隕石中に混在することは,ガーデニングにより母天体が掘り起こされ,異なる深さにあったコンドリュールが混じりあったと考えることができる.しかし,コンドリュール中のガラスが直接隕石のマトリックスと接している組織がみられたことから,CR隕石は母天体上での最終的な岩石化を被った後は水質変成を受けていないと結論づけた. ...
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