2電子励起状態を含んだ衝突輻射モデル

プラズマからのスペクトル線解析及び実効的な電離、再結合、励起速度駅数を求める為に衝突輻射モデルが広く用いられている。衝突輻射モデルについては藤本[1]やGreenland等[2]によって調べられているが、主に1電子励起状態についてのモデルである。2電子励起状態から放射されるサテライト線は、プラズマの電子温度測定に用いられている。また2電子再結合の密度効果は、プラズマ中のイオン密度費に影響する。レーザー生成プラズマで発生するサテライト線に対しての簡単な衝突輻射モデルに関する議論はされているが[3]、2電子励起状態を含んだ衝突輻射モデルに対しては、まだ十分に調べられていない。 本論文では、高温高密...

Full description

Bibliographic Details
Main Authors: 山本 則正, ヤマモト ノリマサ, Norimasa YAMAMOTO
Format: Thesis
Language:Japanese
Published: 2002
Subjects:
Online Access:https://ir.soken.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=497
http://id.nii.ac.jp/1013/00000497/
Description
Summary:プラズマからのスペクトル線解析及び実効的な電離、再結合、励起速度駅数を求める為に衝突輻射モデルが広く用いられている。衝突輻射モデルについては藤本[1]やGreenland等[2]によって調べられているが、主に1電子励起状態についてのモデルである。2電子励起状態から放射されるサテライト線は、プラズマの電子温度測定に用いられている。また2電子再結合の密度効果は、プラズマ中のイオン密度費に影響する。レーザー生成プラズマで発生するサテライト線に対しての簡単な衝突輻射モデルに関する議論はされているが[3]、2電子励起状態を含んだ衝突輻射モデルに対しては、まだ十分に調べられていない。 本論文では、高温高密度プラズマにおける2電子系イオンに対する2電子励起状態を含んだ衝突輻射モデルの構築を行い、構築したモデルを用いて体系化を試みた。体系化の一つとして、高密度プラズマで直接遷移の速度係数に対して重要になる実効的な速度係数の電子温度・密度依存性について調べた。実効的な速度係数は、高密度プラズマにおいて間接的な寄与が直接遷移よりも大きくなることで重要になる。実効的な速度係数は、藤本と加藤により2電子系イオンに対する2電子励起状態を含んだ衝突輻射モデルにより調べられた[4]。彼らは、1s-28励起/脱励起に対して2電子励起状態2snlを、1s-2p励起/脱励起に対して2pnlを取り入れた衝突輻射モデルを各々構築した。その結果、実効的な速度係数に対して、2電子性捕獲一梯子様励起・電離過程による間接的な寄与を示した。また彼らは、Griemの限界レベル(critical level)[5]を用いて実効的な速度係数の近似式を与え、衝突輻射モデルによる結果との一致を示した。 本論文では、2電子励起状態2snl、2pnlと3l'nl状態、更に1電子励起状態1snlを取り入れた衝突輻射モデルの構築を行った。構築した衝突輻射モデルを用いてref.[4]の実効的な速度係数の計算には取り入れられていない、1snl-2lnl遷移、2snl-2pnl遷移や3l'nl状態の、1s-2l励起/脱励起の実効的な速度係数への寄与について調べた。その他に1s-3l励起/脱励起や2l-3l勧起/脱励起、そして1s2-1s、1s2-2lと1s2-3l電離/再結合の実効的な速度係数についても調べた。また、構築した衝突輻射モデルを用いて、最近Rosme j等によってGSI-Darmstadtで測定された、レーザー生成プラズマによる水素様Mgイオンのn=2,3,4からのサテライト線[6]の解析を行った。 本論文における衝突輻射モデルは、ヘリウム様準位の基底状態1s2、水素様準位の1s、2l(2s、2p)と3l(3s、3p、3d)の他に1電子励起状態1snlと2電子励起状態2L7nl、3l'nl(n≦20)の準位を考慮している。また原子過程としては電子衝突による励起/脱励起、電離・三体再結合、放射遷移、自動電離・2電子性捕獲、そして放射再結合を考慮している。上述のエネルギー準位と、準位間の遷移過程を取り入れている。ここで、2電子系の励起状態(1snl、2l'nlと3l'nl)の占有密度を1s2、1s、2l、3l状態からの寄与を独立に求め、1s2、1s、2l、3l状態の占有密度の線形和として取り扱い、2電子系の励起状態の速度方程式を、準定常状態を仮定して解くことで求めた。1s2、1s、2lと3l状態の間の実効的な速度係数は、求めた2電子系の励起状態の占有密度を用いて定式化することが出来る。こうして定式化された実効的な速度係数に対して次の2つの性質を持つことが期待される。1つは粒子保存則から得られる速度係数和に対する等式、もう1つは、直接遷移だけでなく間接的な遷移に対しても、高密度プラズマで、詳細釣り合いが成立するということである。今回構築したモデルは、数値計算の結果、この2点の性質を満たす結果が得られ、計算機コードの信頼性が確かめられたといえる。 ...