Resource use of Siberian flying squirrel Pteromys volans in naturally regenerated deciduous forests on Hokkaido Island, Japan

• Main Authors: 山口, 翠, 鈴木, 野々花, 高瀬, かえで, 地引, 佳江, 菊池, 隼人, 内海, 泰弘, 山内, 康平, Oshida, Tatsuo, 押田, 龍夫
• Format: Other/Unknown Material
• Language: Japanese
• Published: 帯広畜産大学 2020
• Subjects: 489; 営巣資源，採食資源，コケ類，DNAメタバーコーディング; Sakhalin
• Online Access: https://obihiro.repo.nii.ac.jp/record/4706/files/oshida&yamaguchi41,40-53,2020.pdf

application/pdf 広域に分布する森林性哺乳類では、その分布域内に複数の異なる森林植生が存在する場合があり、生息域内の植生の相違に伴い、同一種であってもその資源利用性が変化することがある。森林性哺乳類の中で最も樹木資源に依存した生活様式を有する滑空性哺乳類では、この資源利用性の変化が顕著に認められると期待される。そこで本研究では、滑空性の哺乳類の中で最も広汎な分布域を有するタイリクモモンガPteromys volansを対象として、異なる森林植生における資源利用性（営巣資源および採食資源）の変化を明らかにすることを目的とした。本種は、ユーラシア大陸北部から中部一帯、サハリン島、北海道に広く分布し、主にトウヒ属Picea spp.およびマツ属Pinus spp.が優占する針葉樹林や針広混交林に生息する。一方、本種の分布域南東端に位置する北海道の個体群では、針広混交林だけではなく広葉樹林での生息が確認されている。広葉樹林という本種にとって特異的な植生に生息する個体群は、大陸個体群や北海道の針広混交林に生息する個体群とは異なる資源利用性を示すと考えられ、本研究目的のために広葉樹林は最適な調査地であると判断できる。そこで、北海道足寄町に位置する九州大学北海道演習林内の天然生広葉樹林に樹種構成の異なる2か所の調査区を設け、各々に60個の巣箱を設置し、2018年および2019年の5〜10月に定期的な観察調査を実施した。巣箱内に搬入された巣材の観察を行った結果、主な巣材としてコケ類が使われている巣箱が多く見られた。この要因として、本種と同様にコケ類を巣材として利用するカラ類の影響（カラ類の巣材を再利用した可能性）、或いはコケの持つ抗菌作用などの機能性を本種が利用している可能性があるかもしれない。次に、個体捕獲時に採集した糞粒を用いてDNAメタバーコーディングによる食性解析を行った結果、カバノキ属Betula spp.、コナラ属Quercus spp.、サクラ属Cerasus spp.の他に、大陸個体群では報告されていないニレ属Ulmus spp.、シナノキ属Tilia spp.を採食資源として利用することが明らかになった。さらに、センボンゴケ科Pottiaceaeのコケ植物を採食する可能性が本研究により初めて示唆された。以上より、北海道の広葉樹林に生息するタイリクモモンガは、分布域南東端の特異的な森林植生に適応を示し、その地域に存在する資源を特異的に利用している可能性が示された。 Forestry mammal species widely distributed on continents sometimes exist in different habitats within their distribution. Each habitat may provide opportunities for the local population to adapt to its unique ecological characteristics. Of arboreal gliding mammals, the Siberian flying squirrel Pteromys volans has the most extensive distribution. This species is widely distributed across the northern Eurasian continent east to the Sakhalin in Russia and Hokkaido in Japan. It inhabits coniferous forests or mixed forests dominated by Picea spp. and/or Pinus spp. In Hokkaido, the southeasternmost location, P. volans occurs not only in deciduous forests as well as mixed forests. Since this population may use resources unique to deciduous forests, we studied resource use by P. volans nesting and feeding in two study sites in the naturally regenerated deciduous forests in the Hokkaido Research Forest of Kyushu University, Ashoro, Hokkaido, Japan. In each site, we set up 60 nest ...