アイスコア連続融解システムを用いたアイスコア中のメタンの復元 ―グリーンランドSIGMAコア、南極ドームふじコア中に保存された大気の変動に由来しないメタン―

過去の大気中メタン濃度の復元をするため、アイスコアに含まれる気体中のメタン濃度をアイスコア連続融解システム(CFA)で測定している。CFAは、アイスコアを連続的に融解・測定するシステムで、従来の手法に比べ格段に高分解能かつ測定時間の短縮という点で優れた手法である。これまでに得られているCFAを用いたメタンの連続データは、最終氷期以降のもののみであり、それ以前のものは得られていない。国立極地研究所では、最終氷期以前の大気中メタンの連続記録を復元するため、深さ2400m(過去約30万年間)までのドームふじコアをCFAで測定していく予定である。CFAを用いた先行研究から、大気に由来しないメタンがアイ...

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Bibliographic Details
Main Author: 荒井 美穂
Format: Conference Object
Language:Japanese
Published: 2017
Subjects:
CH4
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spelling ftnipr:oai:nipr.repo.nii.ac.jp:00014120 2023-07-30T04:03:57+02:00 アイスコア連続融解システムを用いたアイスコア中のメタンの復元 ―グリーンランドSIGMAコア、南極ドームふじコア中に保存された大気の変動に由来しないメタン― 荒井 美穂 2017-04-12 https://nipr.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=14120 http://id.nii.ac.jp/1291/00014053/ ja jpn https://nipr.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=14120 http://id.nii.ac.jp/1291/00014053/ 2017-03-22 アイスコア グリーンランド ドームふじ メタン 連続融解分析 Ice core Greenland Dome Fuji CH4 Continuous Flow Analysis (CFA) Presentation 2017 ftnipr 2023-07-15T19:42:10Z 過去の大気中メタン濃度の復元をするため、アイスコアに含まれる気体中のメタン濃度をアイスコア連続融解システム(CFA)で測定している。CFAは、アイスコアを連続的に融解・測定するシステムで、従来の手法に比べ格段に高分解能かつ測定時間の短縮という点で優れた手法である。これまでに得られているCFAを用いたメタンの連続データは、最終氷期以降のもののみであり、それ以前のものは得られていない。国立極地研究所では、最終氷期以前の大気中メタンの連続記録を復元するため、深さ2400m(過去約30万年間)までのドームふじコアをCFAで測定していく予定である。CFAを用いた先行研究から、大気に由来しないメタンがアイスコア中に含まれることが明らかになってきた(Rhodes et al., 2013)。過去の大気由来のメタンの変動を正確に復元するためには、非大気由来のメタンの特徴や原因を調べる必要がある。そのため、NEEMサイトと同じグリーンランド北西部に位置するSIGMA-Dサイトで掘削されたコアのCFA分析を行った。NEEMサイトと類似して比較的気温が高く不純物濃度が高いSIGMAサイトでは、より大きなメタンの上昇がみられた。それらについて、同時に測定された氷中の不純物などとの比較や原因の議論を行う。一方、ドームふじ基地のような低涵養かつ不純物の少ない南極内陸高原部のメタンの連続データは未だ得られておらず、堆積現場で生成されるメタンの影響があるのかは明らかでない。このようなコアでは、ガスが気泡として取り込まれるまでに時間がかかるため、大気の変動が100年オーダーでスムージングされて保存されている(Spahni et al., 2003)。そこで、他のコアのデータが豊富に得られている時代についてドームふじコアの測定を行い、スムージングや氷床内でのメタン生成について調査する必要がある。現在までに深さ300~332mの測定を実施した。この深度範囲は気体の年代で7600年から8800年前に相当し、大気中メタンの濃度変動が平坦な時期と、8200年前に大きく濃度減少した時期を含んでいる。CFA分析の結果から、大気中のメタン濃度が変化しない時期のデータには、グリーンランドのコアに見られたようなメタン生成の兆候は見られなかった。大気中メタン濃度が大きく変動した8200年前付近には、大気中の濃度変動を示すトレンドに重なって、大気由来とは思われない細かい周期的変動がみられた。その振幅は10 ppb程度であり、周期は深度で10 cm程度である。この細かい変動は、もともと気体が氷床に閉じ込められる深度域(フィルンの底部)における密度のムラによって生じている可能性がある。フィルンの氷化深度域の上部と下部で形成された気泡に閉じ込められる空気の年代は100年スケールで異なるため、深度方向に隣り合った層が通気を失う深度が異なる場合、それらの層に含まれる空気の年代が平均的に異なることになる。したがって、氷床内の空気の年代が深度方向に入れ替わることが考えられ、その効果が、大気のメタン濃度が急速に変化した時代の測定データとして現れたと考えられる。今回得られた結果は、今後ドームふじコアをCFAで測定した結果から過去の大気を復元していく際に、データ解釈をしていくうえで欠かせない知見である。 Polar Meteorology and Glaciology Group seminar / 気水圏コロキウム 日時:3月22日(水)11:00-11:50 場所:C301(3階セミナー室) Conference Object Greenland ice core 国立極地研究所 National Institute of Polar Research Repository, Japan Dome Fuji ENVELOPE(39.700,39.700,-77.317,-77.317) Greenland
institution Open Polar
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荒井 美穂
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