21世紀ケベックにおけるイヌイット文学とイヌー文学の魅惑的な出現 : 文学的事実についての方法論的再解釈
世界中、とりわけ北方における文字で書かれた先住民文学の出現は、21 世紀の始まりを特徴づける出来事である。ケベックでは、イヌーとイヌイットに関する文学的事例の研究により、この現象が提起する歴史的・方法論的諸問題が把握されると同時に、イヌー文学とイヌイット文学を隔てる大きな違いも明確にされている。イヌー文学はケベック文学に近く、同じ文芸機関を共有しているのに対し、イヌイット文学は周極的な一つの全体(un tout circumpolaire)の一員として、ケベック文学とは距離を置く。両文学の特徴を際立たせるのは、文学の機能と用法(証言、癒し、知識の伝達)、認識の方法としての物語の重要性、自然との...
Main Authors: | , |
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Format: | Article in Journal/Newspaper |
Language: | Japanese |
Published: |
北海道大学メディア・コミュニケーション研究院
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Subjects: | |
Online Access: | http://hdl.handle.net/2115/77226 |
Summary: | 世界中、とりわけ北方における文字で書かれた先住民文学の出現は、21 世紀の始まりを特徴づける出来事である。ケベックでは、イヌーとイヌイットに関する文学的事例の研究により、この現象が提起する歴史的・方法論的諸問題が把握されると同時に、イヌー文学とイヌイット文学を隔てる大きな違いも明確にされている。イヌー文学はケベック文学に近く、同じ文芸機関を共有しているのに対し、イヌイット文学は周極的な一つの全体(un tout circumpolaire)の一員として、ケベック文学とは距離を置く。両文学の特徴を際立たせるのは、文学の機能と用法(証言、癒し、知識の伝達)、認識の方法としての物語の重要性、自然との密接な関係といった諸要素である。ジョゼフィーヌ・バコンJoséphine Bacon、ナオミ・フォンテーヌNaomi Fontaine、タムスィ・クマクTaamusi Qumaq、そしてマリ=アンドレ・ギル Marie-Andrée Gill の作品を通じて、読者は、長らく過小評価されてきたファースト・ネーションズやイヌイットたちの社会と文化を発見することが可能になる。今日では世界的なものとなったこれら作家たちの成功は、ファースト・ネーションズやイヌイットに寄せられる関心の大きさを証明している。 |
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