樺太郷土会の活動とその影響 : 新聞・雑誌による郷土研究の取り組み
本論は、日本領時代の樺太における郷土研究について、島内で発行された新聞・雑誌から、その形成と展開を考察したものである。 日本領樺太には大正期にパルプ・製紙工業が進出し、水産業に代わる基幹産業へと成長する。工場を中心とした市街地が拡大し、また、原材料を供給する林業により冬期間の労働が生まれたことで、移住民の定住を促進させた。 昭和期に入ると、内地での郷土研究・郷土教育の影響を受け、移住地であるこの地域を「郷土」として研究する取り組みが現れる。1930年に結成された樺太郷土会には、教職員、樺太庁の役人、新聞記者など、幅広い人脈が広がっている。その研究分野も、歴史、民族学、自然科学など樺太における様...
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北海道大学大学院文学研究科北方研究教育センター
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fthokunivhus:oai:eprints.lib.hokudai.ac.jp:2115/73537 2023-05-15T18:09:08+02:00 樺太郷土会の活動とその影響 : 新聞・雑誌による郷土研究の取り組み Activities and Impacts of the Sakhalin Regional Study Group of the Japanese Territory : Efforts of Local Research by Newspapers and Magazines 鈴木, 仁 http://hdl.handle.net/2115/73537 jpn jpn 北海道大学大学院文学研究科北方研究教育センター http://hdl.handle.net/2115/73537 北方人文研究, 12: 19-47 211 bulletin (article) fthokunivhus 2022-11-18T01:05:19Z 本論は、日本領時代の樺太における郷土研究について、島内で発行された新聞・雑誌から、その形成と展開を考察したものである。 日本領樺太には大正期にパルプ・製紙工業が進出し、水産業に代わる基幹産業へと成長する。工場を中心とした市街地が拡大し、また、原材料を供給する林業により冬期間の労働が生まれたことで、移住民の定住を促進させた。 昭和期に入ると、内地での郷土研究・郷土教育の影響を受け、移住地であるこの地域を「郷土」として研究する取り組みが現れる。1930年に結成された樺太郷土会には、教職員、樺太庁の役人、新聞記者など、幅広い人脈が広がっている。その研究分野も、歴史、民族学、自然科学など樺太における様々な事象を対象にしており、研究成果は新聞や出版物で発表された。また、史跡保存、博物館の資料収集、図書館設立も企画し、樺太庁への運動も行っている。 樺太郷土会結成の契機には、樺太の有力紙『樺太日日新聞』の主筆菱沼右一による主導的役割があり、同紙は活動の広報媒体にもなっている。また樺太郷土会が活動した時期に、政府や樺太庁では、樺太を内地に編入し、自立した地方行政への転換が計画されたことも、住民の郷土意識が求められた背景に影響していると思われる。 会の活動は1932年にはなくなるが、参加した研究者は、個人や別の団体を結成し、研究活動を続ける。1930年に樺太郷土会により始められた様々な活動は、その後も公的な文化事業や個人の研究活動に影響している。 This report examines the formation and development of regional surveys in Sakhalin, Japan, from newspapers and magazines published on this island. In 1930, in Sakhalin of Japan, a group of local research was born. To form an organization, the editor-in-chief of Karafuto's famous newspaper "Karafuto nichinichi shimbun" is involved. The purpose of this organization was to improve local consciousness of Japanese residents of Sakhalin through research activities. Various researchers participated in group activities such as history, ethnology and natural science, and the research results were published in newspapers and books. It also cooperates in preserving historical sites, collecting data on museums, and setting up libraries. From the activities of this group, you can know the local consciousness of the Japanese formed in the colony. The activities of the group will be lost in 1932, but the participating researchers will form individuals and other organizations and continue their research activities. Activities started in 1930 by organizations of regional research have been influential since then. Article in Journal/Newspaper Sakhalin Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers (HUSCAP) |
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本論は、日本領時代の樺太における郷土研究について、島内で発行された新聞・雑誌から、その形成と展開を考察したものである。 日本領樺太には大正期にパルプ・製紙工業が進出し、水産業に代わる基幹産業へと成長する。工場を中心とした市街地が拡大し、また、原材料を供給する林業により冬期間の労働が生まれたことで、移住民の定住を促進させた。 昭和期に入ると、内地での郷土研究・郷土教育の影響を受け、移住地であるこの地域を「郷土」として研究する取り組みが現れる。1930年に結成された樺太郷土会には、教職員、樺太庁の役人、新聞記者など、幅広い人脈が広がっている。その研究分野も、歴史、民族学、自然科学など樺太における様々な事象を対象にしており、研究成果は新聞や出版物で発表された。また、史跡保存、博物館の資料収集、図書館設立も企画し、樺太庁への運動も行っている。 樺太郷土会結成の契機には、樺太の有力紙『樺太日日新聞』の主筆菱沼右一による主導的役割があり、同紙は活動の広報媒体にもなっている。また樺太郷土会が活動した時期に、政府や樺太庁では、樺太を内地に編入し、自立した地方行政への転換が計画されたことも、住民の郷土意識が求められた背景に影響していると思われる。 会の活動は1932年にはなくなるが、参加した研究者は、個人や別の団体を結成し、研究活動を続ける。1930年に樺太郷土会により始められた様々な活動は、その後も公的な文化事業や個人の研究活動に影響している。 This report examines the formation and development of regional surveys in Sakhalin, Japan, from newspapers and magazines published on this island. In 1930, in Sakhalin of Japan, a group of local research was born. To form an organization, the editor-in-chief of Karafuto's famous newspaper "Karafuto nichinichi shimbun" is involved. The purpose of this organization was to improve local consciousness of Japanese residents of Sakhalin through research activities. Various researchers participated in group activities such as history, ethnology and natural science, and the research results were published in newspapers and books. It also cooperates in preserving historical sites, collecting data on museums, and setting up libraries. From the activities of this group, you can know the local consciousness of the Japanese formed in the colony. The activities of the group will be lost in 1932, but the participating researchers will form individuals and other organizations and continue their research activities. Activities started in 1930 by organizations of regional research have been influential since then. |
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