Phylogenetic and functional analysis of novel bacteria isolated from aquatic environment [an abstract of entire text]

細菌をはじめとする微生物は非常に高い生理生化学的多様性を有しており、その代謝活動は地球規模の物質循環に大きな影響を及ぼしている。また細菌は系統学的な多様性も非常に高い。細菌の正式な分類と命名、および細菌の有する機能や性質の解明は、細菌を分離培養することによってのみ実現する。しかし、これまでに分離培養された細菌種の数は細菌全体のうちわずかでしかない。本研究においては、水圏環境から新規細菌を分離培養し、得られた新規細菌株の系統分類と機能解析を行うことを目的とした。skLN1株は淡水湖堆積物を接種源とする培養系より得られた新規通性嫌気性細菌である。skLN1株の細胞は桿状で、細胞長は5-100μmと...

Full description

Bibliographic Details
Main Author: 渡邊, 美穂
Other Authors: 福井, 学, 森川, 正章, 寺島, 美亜
Format: Other/Unknown Material
Language:Japanese
Published: Hokkaido University
Subjects:
468
Online Access:http://hdl.handle.net/2115/62110
Description
Summary:細菌をはじめとする微生物は非常に高い生理生化学的多様性を有しており、その代謝活動は地球規模の物質循環に大きな影響を及ぼしている。また細菌は系統学的な多様性も非常に高い。細菌の正式な分類と命名、および細菌の有する機能や性質の解明は、細菌を分離培養することによってのみ実現する。しかし、これまでに分離培養された細菌種の数は細菌全体のうちわずかでしかない。本研究においては、水圏環境から新規細菌を分離培養し、得られた新規細菌株の系統分類と機能解析を行うことを目的とした。skLN1株は淡水湖堆積物を接種源とする培養系より得られた新規通性嫌気性細菌である。skLN1株の細胞は桿状で、細胞長は5-100μmとばらつきが大きかった。系統学的解析により、skLN1株はBacillus綱Alicyclobacillus属のA. pohliaeとA. consociatusを近縁種とすることが示された。Bacillus目全体を網羅する系統樹の分岐パターンよりAlicyclobacillus属はその単系統性が失われていることも明らかになった。skLN1株はA.pohliaeとA.consociatusと共に、大多数のAlicyclobacillus属細菌と大きく離れたひとつの系統群を形成した。skLN1株およびA.pohliaeとA.consociatusは全て中性付近のpHで最適に増殖したが、一般的なAlicyclobacillus属細菌は全て酸性を好む性質があった。以上のことから、skLN1株を新属新種細菌Effusibacillus lacusとして記載すると共にA. pohliaeとA. consociatusの2種をE. pohliae、E. consociatusとする再分類の提唱も行った。Pf12B株は汽水性部分循環湖堆積物を接種源として用い、石油系炭化水素を加えた培養系 よ り得 ら れ た新規硫 酸還 元 細 菌 であ る 。Pf12B株はDeltaproteobacteria綱Desulfovibrio目Desulfomicrobium科に属していることが系統学的解析から示された。Desulfomicrobium科はDesulfomicrobium属のみを含む分類群であったが、Pf12B株およびこれに近縁な環境配列はこの科内で独立した一つの系統を形成しうることが示された。すべてのDesulfomicrobium属細菌は短い桿状の細胞形態を有し、デサルフォビリジンという酵素を持たないことが知られている。しかしPf12B株の細胞は運動性を持つらせん型であり、さらにデサルフォビリジンを保有していることが示唆された。デサルフォビリジンはDesulfovibrio目においてはDesulfovibrio科の一部系統の細菌のみがこれを保有することがこれまでに分かっており、この有無は硫酸還元細菌の化学分類における重要な指標である。Desulfomicrobium科に属すにもかかわらずこれを有する新規細菌を得たことは分類学的な意義が大きい。生理学的にも近縁種とは異なる点が多いため、Pf12B株をDesulfomicrobium科の新属新種細菌Desulfoplanes formicivoransとして提唱した。南極海洋沿岸堆積物を接種源とした培養系より新規通性嫌気性細菌SPP2株を得た。SPP2株はBacteroides門Bacteroides綱のMarinifilum科に属することが系統学的解析により明らかになった。SPP2株は系統樹上において近縁な環境配列とともにMarinifilum属の側系統となる独立した系統群を形成した。既知のMarinifilum属の細菌種はすべて中温性の細菌であったが、SPP2株は0-25°Cの間で増殖し18-22°Cを至適温度とする通性好冷性細菌であった。SPP2株は有機物の利用性についても近縁種とは大きく異なった。これらの特徴に基づき、SPP2株をMarinifilum科における新属新種であるAlgorifilum antarcticumとして提唱した。汽水性部分循環湖堆積物を接種源として用い、石油系炭化水素を添加した集積培養系より新規細菌HC45株を純粋分離株として得た。HC45株は最近縁種(Firmicutes門Clostridium綱に属する細菌)との16S rRNA遺伝子塩基配列相同性が85%以下と非常に低かった。16S rRNA遺伝子塩基配列に基づきFirmicutes門全体にわたる系統学的解析を行った結果、HC45株は近縁な環境配列とともに既存の系統群から独立した系統学的位置にあることが示された。HC45株は中度好熱性細菌であり、糖や有機酸などを用いて生育した。HC45株の細胞形態は球状-桿状-糸状と多様であり、細胞の長さは10-100 ...